表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺し屋の娘ミーナは、催眠アプリの力でイケメン王子の『婚約者』になりすまし、彼を搾取しつくします。  作者: フーラー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/25

4-1

私がサロメに身柄を拘束されて、何日か経過しただろうか。

護送用の頑丈な馬車に揺られながら、私はサロメに尋ねた。


「こんな馬車に乗せて……私をどうするの?」

「フフフ、どうなのかしらねえ……」


そういいながら、彼女はニヤニヤと私から奪った催眠アプリを見せつけた。


「ところでこの板……確か、すまほっていうのよね?」

「……そうだけど……」

「これを使えば好きなように他人を操れるってことなのよね」

「……うん……」

「ふうん。これを使って、ランド……ううん、アンドラス王子を洗脳して連れ出したってことなのね?」

「え……どうしてそれを?」



思わず私は叫んだ。

確かサロメはオルニアスの親戚とは言えども遠縁の立場だ。実際アンドラス王子は彼女と面識がないと言っていた。


するとサロメは少し呆れたような表情をしながら、隣にいた護衛と思しき兵士を指さした。


「私の屋敷で働いていたこの兵士はね? 昔はオルニアス様の元で働いていたのよ。……先日、たまたま街で王子の顔を見て、気が付いたそうね」

「あ……」


思わず私は言葉を失った。

……それはそうだ。彼女が王子と面識がなくとも、彼女の周りの人物がそうとは限らない。そんな初歩的なミスに気づかなかったのか。


サロメはよく整った顔を醜く歪めながら答える。


「フフ……あなたは王子を洗脳して誘拐した大罪人ですものね……。きっとオルニアス様のもとに送り付けたら、あなたは晒し首になるでしょうね?」

「そうだろうね……」


オルニアス王子は、理由を付けて『傷つけていい人』を見つけて、苛烈な暴力を振るうことを好む性格だ。恐らく私が彼のもとに差し出されたら、処刑は免れまい。


「で、王宮まではあとどれくらい?」

「……あら、思ったより驚かないのね?」


だが、私は寧ろオルニアス王子に処刑されるなら、それでいいと思っている。

……本当に私が怖いのは、アンドラス王子にもう一度会うことだ。


サロメに催眠アプリの所有権が移ったということは、恐らく今頃アンドラス王子は催眠が解けているはずだ。そして当然、私が今まで王子にやってきた所業の数々も覚えているに違いない。


(きっと……私のこと、凄い憎んでいる……そんな王子に罵倒されるなんて、絶対に嫌……! そんな王子の顔、絶対に見たくない……それなら、処刑されるほうがマシ……)


私が死の恐怖を持たないことが期待外れだったのか、サロメは少し不快そうな表情尾を見せた。


「ふーん……。悟ったような顔ね……今のあなたを凌辱してもつまらなそうだし……そうね、あなた」

「は、はい!」


そういうと、彼女は先ほどの兵士に声をかけた。


「催眠アプリの話は聴いたわよね? 使えばどんな相手も意のままに操れるという道具だということを」

「は、はい……アンドラス様があの場に居たのを観たら、嫌でも……」


彼から見れば、あの催眠アプリの効果はアンドラス王子がここにいる時点で疑うべくもないということだろう。

その兵士は怯えた様子でそう答えると、サロメはニヤリと笑う。



「このアプリを使ってあなたに『自害しなさい』って命令したら……どうなるか分かるわよね?」

「ひ……や、やめてください、それだけは……」

「なら、今ここで豚の真似をして踊りなさい?」

「は、はい……ブヒ……ブヒ!」


そういうと、その兵士は慌てた様子で豚の真似をしながら踊り始めた。



「キャハハハハ! いいわね、人を好きに支配できるのって、最高ね!」

(そうか……こんな使い方もあったのか……)



催眠アプリを使って『暗示をかけて欲しくなかったらいうことを聞け』と、脅しの道具に使う。そんなやり方については、私は思いつきもしなかった。


サロメは酷薄な表情を浮かべて呟く。


「フフフ……。楽しみね、この催眠アプリを使えば……私はどんな劇団にも簡単に入れるわね……!」

「…………」

「ううん、入るだけじゃない! すぐにでも主役にしてもらえるわよね! 観客に催眠をかければ、富も名声も思いのまま……フフフ……!」



それを聞いて、私は彼女に失望した。

仮にあの催眠アプリを使って『どこかの資産か家に学費を出させる』という形で『機会を得るためのもの』として使うのであれば、まだ納得できた。


だが、彼女はあのアプリを使って『結果を得るためのもの』として使おうというのだ。



(やっぱり、彼女に推薦の機会を与えたのは間違っていたのかな……)


そう思いながら、彼女が嬉しそうに高笑いするのを私は見つめていた。



「ところで、アンドラスはどこにいるの?」

「さあ、私は分かりませんわ? ……あの方は優しくて顔もいいし、何よりまだ利用価値がありますもの。オルニアス様のもとには差し出さずに、とりあえず私の伴侶として迎えてあげますわ?」


はっきりいって、私はアンドラスの『婚約者』としては最低な女だっただろう。

だが、それでもこの女にだけはアンドラスと結婚してほしくない。


「まあ、ミーナ? あなたはそんなことを気にしなくてもいいですわ? 催眠アプリの効果が無くなったあなたのことなんて、誰も愛していないでしょうから」

「だろうね……アンドラスたちが私のことを恨んでることくらい、分かってる……」


恐らく数日と経たないうちに王宮に着くだろう。

それまでの命だと思いながら、私はそう頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ