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殺し屋の娘ミーナは、催眠アプリの力でイケメン王子の『婚約者』になりすまし、彼を搾取しつくします。  作者: フーラー


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17/25

3-3

その数日後。


「なあランド? 最近さ、お前元気ないな?」

「ああ、いや……」

「分かった! 誰か、好きな人でも出来たんだろ?」


クラスメイトがそんな風にからかっているのを見ながら、私はぼーっとしたように彼をみつめる。


(……好きな人、か……)


今はアンドラスのことは催眠アプリで操り、私を『婚約者』だと思い込ませている。

だが、※婚約者だから私を好きにならなくてはならないというわけではない。

(※当然だが、この時代の婚約は平民も含め政略結婚である)


その男子生徒の軽口に、女子たちが群がるように話しかけてきた。


「ええ、ランド様が?」

「そういえばランド様ってどんな方が好みなのです?」

「ああ、それ私も気になります! 髪型とか色々知りたいです!」

「あ、いや……」


そういいながら、アンドラスは少し困ったような表情を見せた。

最も、彼が少し困った顔をしているのは理由がある。私が催眠アプリの力を使って、彼に無理難題を押し付けたからだ。


「別にそういうわけではないよ。ちょっと放課後に用事があってな……」

「放課後? まさか、デートとか?」

「え~! ランド様が誰かとデートするとか考えられないんですけど!」


……それにしてもアンドラスは女子生徒にモテる。

正直見ていてあまり気持ちのいいものではない。本音では今ここで「婚約者アピール」」をしたいところだが、流石にそれをするほど私は勇者じゃない。


「いや、ちょっとやめてくれ。……まあ、今の話は気にしないでくれ」

「え? ああ……」


そういうとアンドラスは困ったような顔をしながらもそうお茶を濁した。





ーーーーーーーー


そしてその日の放課後。

私は学校の屋上、その物陰でアンドラスの姿を見守っていた。



「済まないな、サロメさん。待たせたかな?」

「ううん、別に気にしないでくださいな」


アンドラスが話をしているのは、サロメだ。彼女は、私がアンドラスを通して屋上に呼び出したのだ。


(さ、寒いな……凄い風……!)


季節は2月になっており、木枯らしが吹きつけてくる。


「寒いな、今日は……そうだ、良かったら私のマントを貸そう」

「え? ……そうですね、ありがとうございます」



そういうとアンドラスはサロメにマントを被せた。

……くそ、正直王子のマントを私以外の人に使わせるのはものすごく癪に障る。だが、これも私の計画のためだ。



(あの女を学校から排除するために、お願いします、王子……)


そう思いながらも、私は二人を物陰で見つめていた。


「それで話ってなんですの?」

「……ああ……」


正直、私はあの女と話なんかしたくない。そもそも、普段からあまり彼女とは会話がないうえにテレーズの親友である私が声をかけても、怪しまれるだけだ。


だからアンドラスに対して『彼女の気持ちに寄り添い、悩みを聞き出しなさい』と催眠をかけたのだ。


(まあ、母だった、屋上からサロメを突き落としていたんだろうな……)


正直、サロメを排除するだけなら暴力で安易に解決するほうが楽だ。

アンドラスに催眠をかけて、そう命令すれば、たやすくやってのけるだろう。


だが、仮に催眠下だとしても『気に入らない奴を暴力でねじ伏せる』という体験をアンドラスに学ばせたくない。一度でもそれを学んだものは、家庭でも同じことをすると私は身をもって知っているからだ。



「最近……サロメさんは少し、周りに距離を置かれているのが気になったんだ」

「私が?」

「ああ。今までのように、ミリアムさんやマリアさんたちと会話をしなくなっただろう? ひょっとして、喧嘩でもしたのかと思ってな」

「……いえ、別に……」


そう言いながらも、忌々しげな表情を見せるサロメ。


「正直、あまり学校が楽しくなさそうだと思ったんだが……。私に出来ることがあったら教えて欲しいと思ったんだ」

「……ったく、白々しい……どうせ、あなたは……」


その発言に、一瞬ドキリとした。

……まさか、催眠アプリを使って私が彼を操り人形にしていることがバレている?

いや、それは流石に考えすぎだろう。


そう思っていると、サロメはツンとした表情をして答える。


「ううん、まあいいですわ? ……折角だから、ランドには教えてあげますけど……。この私、最初から学校生活なんて、楽しいなんて思ったことはありませんわ?」

「そうなのか?」

「ええ! ……そもそも私が行きたかった学校は、こんな田舎のチンケなところじゃありませんもの!」


……それは私も想定できなかった。

だが今にして思うと、仮にも下級貴族であるサロメがこんな平民が行くような学校に来るのは考えにくかった。



「本当は私は……アカデミーで声楽を学びたかったんですの」


そういいながら、サロメは珍しく本音を吐露するように呟いた。

いつもの計算で行うような作り笑いや笑顔ではなく、初めて彼女の素顔を見たような気がした。

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