第七品目 秋茄子は嫁に食わすな〜麻婆茄子
「秋茄子を嫁に食わせろ」
とある日、秀美様から俺にきた◯インだ。
正しくは、「秋茄子は嫁に食わすな」
その意味は二つある。一つは、「秋茄子は美味しいので、嫁に食わせるのは勿体ない」という嫁いびり説。二つ目は、「秋茄子は体を冷やすので、妊婦には良くない」という嫁労り説だ。
…茄子を御所望らしい。俺は、食欲が爆発して太りまくった秀美様を放置しまくっていた。…そろそろ行かないとな。
★★★
俺は、その週の日曜日、社長の家に来た。パトラッシュを抱き上げて秀美様を捜す。
「お邪魔してます。社長。秀美様は?」
「…転移魔法って便利だよね。お前毎日家に来てるのに最近秀美を見たことないの?」
社長が訝しげに迎えてくれた。
「ええ。パトラッシュとは、毎日会ってますが」
取り敢えず、俺は、麻婆茄子の調理に取り掛かった。
茄子は切れ目を入れて乱切り。◯ュウジは、とにかく包丁捌きが素敵。永遠に見れるので、料理しなくてもあれは見る価値がある。
塩を振って、少し置いておく。水が少し出てきたら、キッチンペーパーで拭き取り、その後素揚げ。
素揚げする時は、しっかり狐色にすること、そのまま食べられるくらい熱を通すことがポイント。
挽肉を炒める。この時、挽肉は、自分でコマ肉を刻むとよりグッド。これは、テレビで見てパクった方法。
ニンニク、豆板醤、甜麺醤を入れる。甜麺醤は、焦げやすいので注意。
水、中華スープの素、酒、醤油、ごま油、ラー油を入れる。
茄子と長ネギを入れたら沸かして、水溶き片栗粉を入れる。
最後にお酢で味をしめたら完成!
部屋中に麻婆茄子のいい香りが広がった。中華料理のこの食欲をそそる香り良いよね。今回は、「秀美様とお腹のお子様が母子ともに健康になりますように」「お子様が、顔と頭の良さは秀美様、性格は社長に似ますように」と願いを込めて作った。
「…いい匂い」
匂いに誘われて、「のっしのっし」と足音がした。恐竜? 重量感のある足音である。
「ぶっ!」
俺は、思わず噴き出してしまった。ダイニングに顔を出した秀美様はまるで…。
「◯ツコデラックス!」
百キロは超えてそうな巨体で現れた秀美様。すっぴんでもお美しいので、まるでパツキンの◯ツコデラックス。
「あんた! 今笑ったわね! 私の為に料理作ってくれるのは感謝だけど、こんなに太らせて! 今回で責任取ってくれるんでしょうね!」
「好夫のお母様が色々世話を焼いてくださるのは有り難いけど、迷信深くって、茄子食べさせてくれなかったのよ!」
「…秀美様、麻婆茄子を作ったので、今回の無礼は、水に流してください」
「まぁ、美味しかったらね!」
ドスンと椅子に座った秀美様、椅子が壊れないか心配。(笑)
俺は、麻婆茄子を装って勧める。
「いっただきまーす!」
「! トロットロの茄子がめっちゃ美味しい。濃いめの味付けがまた良いわね!」
麻婆茄子は大成功。茄子はカリッカリで香ばしく、口にいれるとトロッととろける。ちょっと味濃いめだけど、しつこくなくて、いくらでもいける。
「お代わり!」
…結局、秀美様と社長と俺で茄子を十本も食べてしまった。フライパンで作るから、一回の量が少なくて大変なんだから…。
「…まぁともかく、あんたのご飯は最高だわ。ありがとう」
★★★
一ヶ月後。
「麗二のお陰で、母子ともに素晴らしく健康です。って先生に褒められたのよ! 普通のマタニティー服が入って、外出も楽しいわ! 本当にありがとう!」
◯インと一緒に写真が。秀美様は、◯ツコデラックスから、マリリン◯ンローになっていた。
前から秀美様の痩せ過ぎは気になっていたが、秀美様は標準くらいの体重になると、マリリン◯ンローに激似なので、それを気にされていたということだ。
まぁ、幸せそうなら何よりだ。今回も、感謝されて嬉しいな。
人の役に立てるって嬉しい。