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第四品目 過ぎたるは猶及ばざるが如し〜しそ風味唐揚げ〜

「♫♫♫〜」


俺は、上機嫌でドラマを観ていた。


「ねぇ、リリィに性病うつしたのはジェニーなの?」


「…」


俺は、嘘がつけない。肯定する代わりに目を思いっきり逸らした。


…ってか何故バレてるんだ。


「麗二さぁ、普段ドラマ観ないじゃん。なのに、ジェニーのばっかり観てるし。パトラッシュも早く社長に返してきな」


「…秀美様が借りていいって」


一悶着の後、リリィにパトラッシュを奪われ、返さざるを得なくなった…。


★★★

「♫♫♫〜」


職場で俺が上機嫌に仕事をしていると、社長が現れた。


「…麗二くん、聞いてくれよ! 秀美が…」


「はいはい。明日休みなので、今日仕事が終わったらお家に伺いますから」


「…俺まだ何も言ってないけど」


「秀美様がつわりで大変なんでしょ?」


「!!!」


俺が麻婆豆腐を作ってあげた後、秀美様が光の速さで妊娠しているだろうことは誰の目にも明らかだ。そろそろつわりで苦しんでいる頃だろうと思い、俺はある料理を試作していた。


★★★

「お邪魔しまーす」


「…」


家に入ると、転移魔法で来たからか、社長の姿はまだなく、秀美様が憔悴しきった様子で、ベッドに横たわっていた。


「秀美様、大丈夫ですか? つわりが酷いと聞いたので、俺が料理を作りに来ました」


「…」


秀美様は、感謝の念を込めて俺を見つめてくれた。喋る気力もないらしい。早く料理を作ってあげねば。


★★★


「おいおい…なんだこの美味しそうな匂いは」


俺が料理をしていると、社長が帰って来た。


俺が作っていた料理はなんと唐揚げ。つわりで苦しむ妊娠に、唐揚げ? と思う人もいるかもしれないが、俺には考えがあった。


鶏肉は一口大に切る。青じそ(規定の量より多めに入れた方が美味しい。刻むのが大変だが、頑張る価値はある)を刻む。


鶏肉、青じそ、酒、みりん、中華だし、塩、おろしにんにく(規定の量よりたっぷりめに)をボウルに入れてよく揉み込んで休ませる。


片栗粉をたっぷりまぶしたら、中温の油でカラッと揚げ、青じそを追加でたっぷりのせたら完成!


レモン汁(◯ッカでもいける)を付けながらどうぞ!


唐揚げの美味しそうな匂いが部屋に充満する。揚げたての唐揚げほど旨いものはない。試作の時に、三百グラムの鶏肉が一瞬で消えて驚いた。◯ュウジ様! 恐るべし。最近のイチオシである。


「…秀美は、つわりなんだぞ。唐揚げなんて…」


俺は、青じそにレモン汁をたっぷりかけて、まずは秀美様に汁を啜ってもらうことにした。


小皿に少し入れて、小さなスプーンで掬い、秀美様の口元に持っていく。


「…秀美様、お辛いのは承知の上ですが、一口だけでもお召し上がりください」


「…」


秀美様は、震えながらも一口すっと吸ってくれた。その瞬間。


「!!!」


「こんなさっぱりと美味しいもの、食べたことない! 唐揚げ持って来て!」


秀美様は、ベッドから起き上がると、貪るように唐揚げを食べ出した。


「…怖いくらいいくらでもいけるわ。ザックザクの衣と、さっぱりしたシソとレモンのマリアージュ。なんて相性のいい…」


「れ、麗二くん、ありがとう。もっと唐揚げを!」


「分かってますって」


俺は、その後家に追加の材料を取る、唐揚げを揚げるのエンドレスリピートを繰り返した。秀美様は一キロ、社長も、五百グラムの唐揚げを平らげた。


「麗二、本当にありがとう」


秀美様と社長に大いに感謝され、前よりも堂々とパトラッシュを借りれるようになった俺。ほっとして、パトラッシュを堂々と攫っていく。

★★★


一ヶ月後。秀美様から◯インがきた。


「麗二! どうしてくれるのよ!」


「一ヶ月に、三十キロも太ったからお医者さんに怒られたじゃないの!」


俺が唐揚げに込めた、「秀美様のつわりが治って食欲が増しますように」という願いは叶いすぎたらしい。W


「…またなんか作りに行かんといかんのか」


俺は、メニューに頭を悩ませながらも、ちょっと楽しかった。


やっぱり料理は楽しい!

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