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第9話


「次はこれ着てみて」

「湊さん…これで何着目ですか…」


私の心配をよそに、湊さんは次から次へと洋服を選んできては私に着させる。


それも、可愛い可愛いなんて言って。


「ごめんごめん。彩花ちゃんが何着ても似合うからつい楽しくなっちゃって」


ほんと、褒め上手なんだから。


「服を選んでくれるのは嬉しいけど私、着せ替え人形じゃないから」


これは照れ隠し。


似合うなんて言われたことないから、どんな反応したらいいのか分からない。


「分かってるよ。これが最後だから!」


その言葉も七回目なんだけどね。


「もう、分かりましたよ」


私が服を好んで着なくなったのは…ある出来事がきっかけだ。


────



たくさんの会社が集まって交流するパーティーが、

月に一度開催される。


湊さんと結婚して、初めて一緒に参加することになり


湊さんに恥をかかせないように私も努力したつもりだった。


だけど、


「…なんだその格好は」

「す、すみません」


私はファッションセンスがなければ、流行りにも疎かった。


だから入念に調べ、専門の方に勧められたものだけを身にまとった。


それなのに…


「まさかそれで行くなんて言わないだろうな」

「…」


決して、褒められるだろうとは思わなかったけど、ここまで否定されるとも思わなかった。


「何をしている。早く着替えてこい」


「すみ、ません。ドレスはこれしかなくて、」

「はぁ、」


「すみま『もういい何も言うな』」


怒ってる、呆れられてる。


また、失敗したんだ、


「今回は俺一人で行く」

「ですが…!」


「よくそんな格好で俺の横を歩こうと思えたな」


「っ、」


泣いちゃ駄目だ。今泣いたらもっと…


あの時思った。


ドレスが悪いんじゃなくて私が悪いんだって。

入手困難なほど人気で、流行りのドレスだったから。


何を着ても私には似合わないんだ。


そう思うようになって、服に手をつける度にその出来事が頭に浮かんで、苦しくなる。


だけど、今の湊さんは何を着ても褒めてくれる。

前の湊さんとは似ても似つかない。


ありのままの私を受け入れてくれる。


「湊さ…」


ここで私が着替えるのを待ってるって言ったのにどこに行ったの。


「佐藤様なら他のお召し物をご覧になっておられますよ」


「あ、そうなんですね、」


もう、ほんとに自由なんだから。


それに、これで最後って言ったのに、また他の服を持ってこようとしてる。


「もしかして彩花様でしょうか?」


「はい、そうですが…」


どうして私の名前を…


湊さんは有名な方だから知っているのも当然か。


「やはりそうでしたか。佐藤様が仰っていた通り、すごくお綺麗でいらっしゃいますね」


「へ?」


もうっ。


私が着替えている間に、店員さんにまで私の話を?


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