第6話
「彩花ちゃん起きて。もう朝だよ」
「んん…」
落ち着く声…誰…
「おはよう。よく眠れたみたいだね」
カーテンを開けられて、眩しくて目が開けられない。
「まだ寝る…」
「もう起きないといけない時間だよ。それより、昨日俺より先に寝てたの知ってた?」
誰かがずっと私に話しかけてる。夢…
「知らない…ん、…」
私の抱き枕どこ…?
あ、あった。
「ふふ、まだ寝ぼけてるの?それとも起きたばっかりだと甘えん坊になっちゃうの?」
なんかいつもと違う…なんか硬い…
「んん、…ん?え、み、湊さん!?どうしてここに」
どうして湊さんに抱きついてるの?
「ふふ、彩花ちゃんがそんなに甘えん坊だって知らなかったな~」
「す、すみません抱き枕だと思って…!」
ちょっと待って、何がどうなってこうなった?
頭が回らない。
えっと、昨日、湊さんと一緒に寝て…あ、そっか。
ここは私の部屋じゃないんだ。
そして、、昨日のことも夢じゃなかったんだ。
「さ、朝ごはん食べよ」
「朝ごはん…?っ、ごめんなさい、私、ご飯用意するのすっかり忘れてて、作ってなくて…今からすぐ用意するので、少し待っていてもらえますか、、」
昨日のことで気が動転して、アラームもセットし忘れて、起こしてもらうまでぐっすり寝てた。
何やってるんだ。
私としたことが、どうしよう、怒られ…
「大丈夫だよ。もう俺が作ったから」
「湊さんが、朝ごはんを…?」
怒るどころか私の分まで朝ごはんを作ってくれた…?
「簡単なものだから申し訳ないけど」
怒るどころか謝るなんて。
ただでさえ、昨日目覚めたばっかりでしんどいはずだから、私が…
私がしっかりしないといけないのに。
「そ、そんな、ありがとうございます」
「朝ごはん作ったぐらいで大袈裟だよ」
なんて言って笑ってくれるから、実感する。
湊さんは湊さんじゃないんだって。
この優しさに甘えてしまうと、湊さんが元に戻った時きっと耐えられなくなってしまうから。
「…ごめんなさい、」
「え?何が?」
「朝ごはんを作るのは私の仕事なのに、湊さんにさせてしまって、」
「いいってば。そんなの、できる方がすればいいんだから。さ、そんな顔しないで。顔洗っておいで」
できる方が…か、
前の湊さんは、家事全般私の仕事だと思っていた。
もちろん、私もそれは私に与えられた役割だと思って、私なりに努力した。
熱が出ようが、どうしても外せない用事が出来た時も、湊さんは一度だって…
「酷い顔、」
鏡に映った私の顔はあまりにも酷かった。
昔のことを思い出すだけでこんな顔になるなんて。
大丈夫…
今の湊さんはそんな人じゃない。