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第4話

「え、そんなに驚くこと?キスの一つや二つぐらいもうとっくの昔にしてるでしょ?」


一つや二つなんて、何言って、ハグすらしたことないのに。


「し、してる訳ないじゃないですか!」


私たちは夫婦らしいこと何一つしてこなかった。

結婚してもう何年も経つのに。


「あ、」

「へ?あ…っ…!」


い、今、キスされた…?


「敬語やめてって言ったでしょ。…あ、もしかして初めてだった?」


一度も恋なんてしたこと…彼氏さえ出来ないまま結婚したんだから当たり前だ。


「別に…」


恋は湊さんと出会った時に、初めてした。

初恋が実らないって言うのは嘘だけど本当なんだ。


「強がっちゃって」


キスなんてしたこと無かったけど、私だって見栄を張りたい時ぐらいある。今がまさにそう。


「ほんとに、初キスじゃないです…っ、ちょ、ちょっと!やめてくださ…っ、んん、湊さ…、湊さん!」


キスなんて何年も一緒に過ごしてきて、一回たりともした事なかったのに…たった一日で何回するのよ。


一生分した気分。


「…ムカつく」


「へ?」

「俺以外とキスしたとか、」


独占欲…強い…


「そんなこと言われても…」


湊さんがこんなことで嫉妬するなんて、

やっぱり、目の前にいる湊さんは別人なんだ。


「ねぇ、ほんとの事を言わないと、今よりもっとすごいキスするけど」


今よりもっとすごい…?って、そんなの無理に決まってるじゃん!


「湊さんが…初キス、だよ、」


言いたくなかったけど仕方ない。


「っ、」


正直に言ったんだから、これでもうキスしないだろう。


「湊さん…?っんん、ちょっ…んっ」


どうして…こんなの、約束とちがうじゃない!


「…これは、俺に嘘をついた罰」


そう言って、優しく口付けをした。


「何を…んっ、ちょっと待って、」


約束と違うじゃない…!

本当のことを言ったのに、どうして、


「…これは沙耶ちゃんが可愛すぎる罰」

「ちょっ…もうやめ、っ、んん、」


引き離そうと強く押してみても、到底叶うはずなくて、


「まだまだあるけど…これ以上したらいろいろと耐えられないから、ここら辺でもうやめといてあげる」


「正直のこと言ったらキスしないって言ったのに…、」


…嘘つき。


「本当のこと言ったら、今よりすごいキスはしないって言ったけど、キスをしないとは言ってないよ」


「な、そんなの…」


ずるくない?


「はっ…!」


今度はなんだ…


「この怪我は何!?」


あぁ、この怪我はお皿を割ってしまって、片付けようとした時にできた傷。


だけど、それほど傷も深くないし、絆創膏を貼る必要もないと思ったからほっておいたのに、


「大丈夫?お医者さんに見てもらった方が…」


心配症すぎるよ…。


前の湊さんならきっと、傷を作ったお前が悪いって気にもとめない。


「大丈夫だから。そんなに大袈裟にする事じゃないよ、」


こんな傷、痛くない。


それよりもっと…


「大袈裟なんかじゃないよ!どんなに小さな怪我でも、心配なんだよ」


「湊さん…」


この人は湊さんだけど湊さんじゃないんだから、ときめいたところで意味ないのに。




こんな温かい言葉をかけられたことは無かったから、どうしても、受け止めてしまう。

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