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第3話

「どうしてかな。君が泣いているのを見ると胸がとっても苦しくなるんだ」


「苦しく…?」


前の湊さんなら、私が苦しんでいようが泣いていようがどうでもよかったはずなのに。


「この話はもうおしまい。ところで、君と僕はどういう関係だったの?初めまして…ではないんだよね?」


私達の間には愛はなかった。


湊さんは私を愛してなかったけど。

私はあの日、本気で逃げ出そうとしたけど。


「私は、あなたの妻です」


それだけは決して変わらない真実だから。


「君と僕が…。そうか、だから君が泣いたら苦しかったのか。君のことが好きだから」


「へ、?」


湊さんの口からそんな言葉を聞くなんて、夢にも思ってなかった。


「好きな人にはいつも笑顔でいてほしいでしょ?」


好き…か、湊さんは私を嫌い、というより関心すらなかったと思う。


今の彼にこんなことを聞いたところで意味が無い事くらい分かってる。


だって前の湊さんと記憶喪失になった今の湊さんは違う人だから。


それでも一度ぐらいは湊さんにお前が妻で良かったって言われたい。


今の彼なら…


「湊さんは…私と夫婦だって知って、その…、嬉しいですか…?」


だけど、聞いて直ぐに後悔した。

こんなこと聞かなければよかったって。


記憶を失ったところで、根本的な性格は変わったりしないから。どうせまた酷い言葉を言われ続けることになる。


それなのに…


「すごく嬉しいよ?」


「え、本当ですか?」


自分から聞いといてなんだけど、私の予想をはるかに上回る、嬉しいなんて言葉が返ってくるとは思わなかった。


「嬉しいよ。こんな可愛い天使みたいな子が俺のお嫁さんだなんて信じられないぐらいだよ」


どうしてそんなこと聞くの?って不思議そうな目で見てくるのはやめてください。


「か、かわいい?」


「うん。すごーく可愛い。だけど、今の感じだと…僕たちあんまり仲良くなかったみたいだね」


仲良くないというか…まぁ、最悪でした。


「湊さんはとても忙しい人だったので、ゆっくりお話する時間…というよりそもそも二人で過ごす時間がなかったんです」


湊さんが返ってくるのは私が眠ったあと。

夜遅く、どこで何をしているのかは聞けなかった。


「そっか…寂しい思いをさせちゃってたんだね」


私はむしろ貴方が家にいない時間の方が大好きでした。

なんて今は口が裂けても言えない。


「しょ、しょうがないですよ、」


「…ふふ、」


「え、どうして笑うんですか、」


湊さんが笑った顔初めて見た…。

私の前では常に無表情だった。


「ごめんごめん、彩花ちゃんが分かりやすすぎてつい」


「え?」


「俺がいない方が良かったって顔してる」

「なっ、ち、違いますよ」


なんでバレてるの、そんな顔に出てた?


「どっちにしろごめんね?」


「いえ、謝らないでください。湊さんは何も悪くないですから」


私が至らないせい。

迷惑ばっかりかけて…困らせて…


「ところで…いつも敬語なの?」

「え?はいそうですけど…」


湊さんの方が二歳年上。

それに恐れ多くてタメ口なんて想像するだけで…


「敬語で話すのやめない?」

「はい?」


私が湊さんにタメ口…?

そんなの無理に決まってる。


「だって、俺達夫婦なんだよ?敬語ってなんか距離感じない?」


そんなこと言われましても…


「努力してみます…」


「ん?」


タメ口で言えって圧力がすごい


「努力してみ…ますね、」


「あー、言ってくれないんだ。そっか、そうだよね。俺の事あんまり好きじゃないもんね。そんな相手と距離縮めるなんて嫌だよね」


なにそれ、ずるい…


「あーもう!分かった!分かったから!」

「ふふ、怒った顔も可愛いね」


「ふ、ふざけないでください」


私はこんな湊さん知らない。

私に可愛いなんて言ってくれたこと…


「ふざけてないのにー。ま、次敬語使ったらキスするから」

「き、キス!?」


今サラッと問題発言したよね。

湊さん…ちょっとチャラくなった?


これが素なのか?


そんなことより。

これからどうなっちゃうの、私の結婚生活!


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