地表をおしのけ
いまや城の壁はくずれ、それとともにワギョク将軍やタクアンが《境》としておいた結界もすべてくずれている。
先にでてきたホムラだったものの《腕》と同じ太さの《指》が、節をまげて地をつかむ。
地響きをさせながら、少しずつ地の下からでてこようとする《モノ》は、さきに出ている片腕を勢いよく上にのばしたかと思うと、肘をまげて地をたたき、ヒビのいった地面に手のひらをつけ、筋をたてて力みだした。
低くうなるような声とも音ともつかないものといっしょに、腕から離れたところの地面が浮くようにはがれ、がごお、と割れる音がしたかとおもうと、また、黒く丸いものの一部が地表をおしのけあらわれた。それがさらにおしあげた地面がまくれあがると、山崩れのような土ぼこりがたち、あたりは一度、なにもみえなくなる。
「 ―― コウド、おまえ、シュンカと兵士たちがいる山にいけ」
タクアンがコウドの肩をつかみ、ゆすった。
地の中からでてくるモノをくちをあけたままみていたコウドはわれにかえる。
「・・・いや、だって、 おれは、」
「ミノワのかたきは、おれにまかせろ」
「いや、おれは、 ―― 」
ミノワはこの腕のなかで崩れていったのだ。




