おれのもの
コウドはその角をつかむと、根元にクナイをつきたてた。
たいしたてごたえもなく、角はもげ、そのまま砂となってきえてゆく。
「 ―― そうだよな。こんなバケモノにとらわれたままなんて、苦しいよなあ」
また皮をやぶり生えてきた次の角をなでながらもぎとろうとしたが、その角には白い人間の手がついてきた。
か えセ おレノ モのだ
《蛇》の中から角をつかむ手には、血走った人間の目玉がひとつあり、コウドをみている。
眉もうごかさずにコウドはその目玉にクナイをつきたてると、そのまま、まだ角をにぎっている指があるほうへと刃をひきあげた。血ではない黒いものをふきだしながら二つにわれた白い手が角をはなしたとき、ようやく《蛇》の首にまきつけた紐がひかりだす。
《蛇》がいままでとはちがう高い悲鳴をあげたのをきき、コウドは飛び降りた。
ふりかえってみた《蛇》は紐のまかれた首から下をふくらませ、とぎれた奇声を発しながら身をよじった。
ずろ
嫌な音をさせて、また『穴』からのび出でた長いからだはとたんに力をなくし、ぐたりと『穴』からたれさがる。




