なんとかここで
「ムカデより気持ち悪いな」
城の壁をこわした腕を凍らせたセイテツがふりかえる。
つぎつぎと腹まわりにあらわれるその《黒い脚》たちは、見えない何かをけって、すこしずつ『穴』からバケモノの身をださせると、役目を終えたようにまた溶けてかたちをかえ、《黒い鱗》となってゆく。
凍った腕を滅しながら、コウドが、シモベを喰ったのか、と顔をしかめ、右目の上をかいたタクアンが、ありゃその刀が通らねえかもしれねえぞ、とスザクをみた。
「ああ、だろうな」
「はあ?おまえ、なにあきらめてるんだよ?」
あわてるセイテツに、おめえのほうがはいりやすいだろ、とスザクは懐から巻物をだした。
「じじいから預かった」
「おい、・・・『はいりやすい』ってまさか・・・」
こわれた城の壁に新しい結界をたしおえたタクアンとコウドも寄ってきて、セイテツの着物の懐やたもとに、勝手に術札をいれてゆく。
「これぐらいで、まあ、なんとかなるだろ」
最後にスザクがセイテツの背をたたき、《経》をたたきいれた。
「おまえな、『なんとか』っていっても、あれにどうやって」
「ここで勝てよ」
タクアンがセイテツの言葉をとぎらせるようにいいつけた。




