ここで勝て
ぼ ボおず シン カン におウ ニオう
われた声でその口がしゃべり、また、 ヲおおおうううウウ となく。
「 このバケモノは、なんだよ?」
タクアンがそのなきごえに顔をしかめる。
「もとは、ホムラっていう人間だけど、《禁術》の《土釜》をして、そこにケイテキの写しをいれたり黒鹿をいれて、さいごに喰ったんだ」
セイテツがうんざりした顔で、宙からこちらに腕をのばす黒い《バケモノ》をさす。
「ということは、おまえら一度こいつを相手にしているんだな?」
「してはいるけど、勝ってはいない」
「それならここで勝て」
セイテツがなにか言い返す前に、ひときわ高くないたバケモノが、首をのばした。
よくみればいま啼いたのはその首にあるたくさんの小さな穴のようだった。
ありゃ人間のくちじゃねえか、とコウドがみあげているあいだに、そのくちたちがまた啼くと、異様にながい片腕がシュンカをねらいのび、とんだコウドが《術札》とともになげつけたクナイがあたってはじけて、腕はいちど引かれる。
だが、そのあいだにのばされていたもう片腕がシュンカをつかんだ。
とたんに、シュンカもろともつかんだ手が破裂した。




