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やるしかねえ
ああ と、息のような声をもらし、白眼の部分も黒くなってゆく将軍が、ささやくように、あとをたのむ、というのと同時に、将軍のからだが地へといっきにひきこまれ、蟻地獄の巣にとらわれた獲物のように、からだ半分がへこんだ円の中心にうもれた。
セイテツの張った地表の氷にヒビがはいる。
「この庭が、ついに《常世のくに》とつながったか。 その神官のつくった氷でザコをおさえて、大物ねらいということだろうが、おまえたち、アレを退治できるのか?」
からだをふるわきいたイカズチの背にのっている坊主が、まだすわったままで腕をくみこたえた。
「できるかわからねえが、やるしかねえのよ」
「 くる 」
将軍が栓のように座している穴をのぞきこんでいるタクアンがつげ、とたんに城が揺れると、耳の奥がつまるように空気がうごいた。
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