出る気
僕のイカズチが、ぐう、とうなって首をふり、立つ。
「きよる。 きのうとおなじ、あのバケモノがくるぞ。 ―― が、きのうよりも『気』をためておる」
「だろうな、兵を喰ったなら、とうぜんだ」
スザクのいつもの率直な言葉に、コウドのあしもとにすわりこんでいた若い兵が、びくりと顔をあげた。
「スザクさま、言いすぎです」シュンカのたしなめる言葉に、そうかすまねえ、と謝るようになった坊主をみたセイテツがにやけ、こっちは任せたといって地面にとびおりると、手をつけた地に、一瞬で氷をはった。
だが、将軍を真ん中に沈みゆく『円』には、《術》がきかずに氷がはらない。
タクアンが、「出る気らしいな」とわらった。
「 っぐ っごっふ 」
せきこみだしたワギョクの顔はすでに半分、『黒』となっている。
タクアンが手を合わせて将軍の前に立った。
「あんたがそれ以上無理すると、むこうはあんたを喰い破ってでてくるし、そうしたらあんたの《術》をむこうが利用するかもしれしれねえ」だからもういいんだよ、と経を綴りだす。
ワギョク将軍!とさけんだ兵士がシモベの背からおりようとするのを、コウドが腕をつかみとめている。




