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みなに伝えて
兵士が涙をながしながら、ワギョクとコウドたちの顔をみくらべ、将軍の言葉をまつ。
からだもうごかせない男は、北の将軍として感謝する、と頭をどうにかさげ、「 ・・・みなに、このことを伝えてこい」と兵士に命じた。
「はい!」
いきおいよく兵がかけだしたとき、ごぅおん、と重いものが地に落ちたような音がその場をゆらし、将軍の座す地面が土煙をみきあげた。
ワギョク将軍が座している場所を中心としたように、地面が円状にへこんでいる。
「 っつご っく、 る ぞっ 」
そのからだに感覚はないといったワギョクが、くるしげな顔で歯をくいしばる。
コウドは兵士を抱え上げてまたシモベの背にのった。
タクアンが経を綴りながら、へこんだ円によれば、ずず、と音をたてながら、真ん中に座る将軍が、蟻地獄の巣にひきこまれるよようにしずんでゆく。
経を綴った指をところどころ地面につけながら、タクアンが円のまわりをはしる。




