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あやまち
「 ―― それで、このシモベをその『穴』をおさえるために置いたってわけか」
タクアンがあぐらをかいてのっている、その硬いシモベの背をたたいた。
「ただ置くだけでなく、シモベの血で、妖物を街中ではなく、こちらにひき寄せようってことか・・・」
セイテツがやりきれないように首をふり、もっとはやくにほかにうつ手がなかったか、とシモベからおり、コウドのよこに立つ。
ワギョクは低くわらう。
「どのような手だ?おれはほかの将軍に、ケイテキを好きでかくまっていると思われているだろう。 それに、《常世のくに》が《この世》にひろがりはじめたいま、どこの将軍も領内の民をまもりたいのはおなじだ。それをおもえばこちらから助けてくれとはいえぬ。 ・・・だいいち、これは ―― あのときケイテキの甘言にのった、おれのあやまちだ」
さいごだけ、かすれた声ではなく、はっきりした声でいいきった。




