おれの中も中庭も
「 ―― おれの中にはいったケイテキは、そこからおれのからだをのっとり、そのままこの北の城内にもどってくると、兵のひとりにうつりどこかへ消えたわ。 そのあとも、たびたび、人から『穴』へとはいり《道》をたどって渡っているようだ。 おかしなものでな、もうからだの感覚もなにもないのに、そういうことだけわかるのよ。 ―― おれの中の『穴』に続く道を、たどってこようとするモノたちの気配もな」
「・・・まさか」
コウドが前のめりになり足をすすめようとするのを、セイテツがよびとめる。
「 そうだ。そこから近づくなよ。 おれのからだも『穴』だから、《常世のくに》の妖物どもが、おれのからだから出ようとする。 はじめのうちは、そんな妖物どもも、それほどの『力』をつかわずともおさえられていたのだが、ちかごろでは、・・・もうおさえ込めぬ。 おれのからだの『穴』はひろがり、いまではこの城もゆがんでしまい、あちこちに《常世のくに》とつながった『穴』がある。とくに、数日前に城のこの中庭にできた『穴』からは、手に負えぬ妖物が出てきて、城の兵を生きたままつかみ、『穴』のなかへと引きずり込んで消えていった。 ・・・あんなものが、この街の中に現れるのだけは、おれは将軍として、とめねばならぬ」




