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腹に《穴》
「わかっておる。 ―― ケイテキがな、・・・病に伏したと言うので、表面上は見舞いということで、ようすをうかがいに行った。 おれはそこで、あいつを殺そうとおもっていたのだがな、逆に、おれのからだをくれ、と腕をつかまれた」
布団に仰臥したケイテキと二人きりになり、ワギョクが心配するように顔をのぞきこみ、懐の短剣をひきぬいたとき、跳ね起きて腕をとりあげたケイテキは、ほんとうに苦しそうで顔色も悪かった。
見てのとおりよ。どうやらもう、このウツワではうまく動けなくてな
だからまず、おまえにうつろうとおもう、と腕をひかれて腹に手をあてられると ―― 。
「 ―― 《常世のくに》とつながる穴をあけられた」
「あ・・・な?」
コウドの目にうつる将軍は、地面に座したそのからだのほとんどが真っ黒で、血ではない、きっと墨のような《なにか)をからだに『かけられた』のかと思ったのだ。
それなのに、『あな』とは?




