悔しくて
おつきあいくださっている方、ありがとうございます!ここで半分でございます。よろしければ、あと半分、どうにかおつきあいください。。。。。
「帝がおれたちのために?」
セイテツが信じられないという顔でほかをみまわす。
「いまのはなしをきいたかぎりじゃ、そういうことになるな。なにしろ、帝がいなかったら、《この世》はもっとはやくに《常世のくに》にのまれてたかもしれねえんだからな」
タクアンがあぐらの膝をたたいたとき、ワギョク将軍のわらいごえがまたひびいた。
暗い向こうからまだ姿をみせない将軍の声は、さっきよりもひどくかすれている。
「 たしかに、帝が、・・・《帝の中身》がいるからこそ、ケイテキはここまで刻をのばしたのだろうよ。ケイテキは・・・《ケイテキの中身》はな、《この世》で帝の中身が人間を《生かす》ように動くのを、おもしろがってみていた。アイツと直に会ってみたくなって将軍になったとも言っていた。 アレにとって《将軍》とは、帝とこの世の関係を近くでみるためだけのものだ。民のことなどひとつも考えておらぬ。 ・・・おれは、おれは北の将軍として、サモンさまに誤解されたのが悔しくてたまらぬ。おれのほうが、―― おれのほうが、ケイテキなどより、領土のことも、民のことも考えていた。厳しい寒さも、せまい平地も、それがあって北の領土だ。だから、民がみな力をあわせ、土地をひらき、とれた作物にもほかの土地の者より深く感謝し、みなで生きてゆくのが北の民だ。それなのに、 ―― ハゴロモ山のふもとの里は妖物のせいでなくなった。そのあと続いた悪天候では、北ばかりでなく、ほかの領土でもひどいことが起こった。それもみな、 アレ のせいだ。おれはもう、ケイテキとかかわりたくなかったが、むこうにとっておれはいい隠れ蓑だ。 おれはな、 ―― アレに、からだをとられそうになった」




