傷ついたシモベ
また、ばさり、とむこうから風がたち、ぶわり、と土ぼこりがおくられ、コウドがシュンカの前にでる。
「 ―― でかいな」
タクアンが言うのに、屋根はずいぶん上だな、とセイテツが氷をとばして距離をうかがい、スザクが鼻を鳴らして、シモベだ、と断言した。
「血の匂いがひでえな」
まさか、とセイテツが暗闇にめをこらす。
「 ―― 傷ついた僕をここにおいてるのか?」
それにこたえるように、ぼっつ、と音がして近くにかがり火がもえあがり、ようやくこの場のようすがみえた。
シュンカがひきつった声をもらし、コウドが舌をうち、セイテツが喉の奥からしぼるような声できいた。
「 ―― 北の将軍は、いったいなにをしてる?」
スザクたちの目の前には、硬い鱗に針のように剣をさされた一頭のシモベが、首を地につけ、開いた口でくるしげな息をしてよこたわっている。
そのからだから流れ出る血がぬらぬらとかがり火に照らされ、よくみれば背にある翼の根元には骨がみえるほどの深い傷がある。
それでも、そのはねをうごかし、シモベはこれいじょうスザクたち人間が寄ってこないように威嚇しているらしい。




