ついてこい
楽にしててくれ、とどこかへ消えた将軍は、スザクたちを病人たちがはいる建物内の、奥の部屋へとおした。
「どこの将軍も、こういうもんか?」
セイテツは、その部屋の壁にぎっしりとつまれた書物をながめた。
紐とじのそれは、背にはなにもかかれておらず、はなれてみるかぎりただの紙束の山だ。
タクアンが部屋におかれた豪奢な布張りの椅子にすわり、棚をみまわす。
「そりゃ、将軍ともなれば、ジュフクさまや帝と直にはなすんだ」
なんでも知ってるあの二人をあいてにするには、これぐらいの知識が必要だろうな、といっているところに、いきおいよくドアがひらき、白い神官の衣をみにつけたヤートが戻ってきた。
「おまえたち、ケイテキをさがしてあるきまわってるのか?それとも、その美しい男で釣ろうとしてるのか?」
ききながらまっすぐに壁の棚へゆくと、まずはかがんで下の段、つぎには台をつかい上の段からと、はじめから目当てにしていたらしいものを、つまれた紙束にしかみえない中から、つぎつぎとぬきとってゆく。
「りょうほうだ」
スザクのこたえにいちどふりかえり、ふうん、となにか考えるようにしてからまたいくつかぬきとったものをかかえ、ついてこい、と右手奥の部屋にきえた。
あわててみながおいかけると、その部屋をでてすぐには石垣でかこまれた水の湧く池があり、そこはまた建物にかこまれた庭かとおもったら、むこうまでずっと湿地がひろがっていた。
おお、とコウドが声をあげ、タクアンがこりゃいい、と手前に、立ち並ぶ巨大な石をさした。
ヤートはそこへむかっている。




