石の城
「なんだ、有名なのか?」
セイテツはスザクやシュンカと顔をみあわせる。
これだから天宮にすんでる人たちは、と顔をしかめたコウドは、タクアンをちらりとみた。
「おれはさすがに知ってるぞ。ジュフクさまのところへいらしたことがあって、ドウアンに、坊主をやめてじぶんのところへ来いと皆のまえで声をかけてな。すぐに断られても、気が変わったら来いと言いおいて帰っていった」おもしれえ人だ、と思い出したようにわらう。
「そりゃ、会うのも楽しみだが、なあ、城にはまだ距離があるのか?まさか、歩いてゆくわけじゃないよなあ?」
セイテツは、さきほどからたどっている、どこまでもひろがる田んぼのあいだ、ずっとむこうまで続く道をながめてきいた。
ああ、ご安心を、と先をゆく兵が、あそこからは景色の写しです、と指をさす。
「妖物が城までまっすぐたどれないように、あちこちにこうして違う景色を写してるんだ」
そういって指をはじき、景色の中に吸われるように消えていった。こわがるコウドの背をおしながらセイテツたちもそこへ入る。
「 ほお。 みごとだな 」
タクアンがその城をみあげてうれしげな声をあげた。
高い塀もなく、その立派なたてものがいきなりあらわれる。
「 ―― 石を積んで組んだのか。 こりゃ、手間も力もそうとうなもんだな」
コウドが逆立った毛をおさえるように首をおさえた。
いっさいの飾りはなく、石をつんだその城は、潔さという意味の美しさがあった。
「槍を投げる装置があるので、城の屋根は平たく、その装置を置けるようにしてあるし、うちの兵は弓部隊を強化してる」もちろん他も強いけどな、と兵はわらった。




