高山の坊主
坊主の格好をした男二人に、荷物をすべて出すように兵が声をあらげ、坊主は無礼者!とどなりかえしている。
「『高山』の坊主であるおれたちに、その態度はなんだ?荷物は大事な経や術札だからおまえらなどに見せる必要はない」
「その術札を見せろといっておるのだ。はやくしろ」
「わからんのか?おれらは高山の坊主だぞ? おまえらのような兵士がそんな態度をとってゆるされるとおもうな?ジュフクさまから東の将軍にお叱りがきてもいいのか?」
「へえ。おまえら、『高山』の坊主だって?」
兵士に一歩詰め寄った坊主だという男の肩をタクアンがつかんだ。
「 どこの房に属するなんて名前かいってみろ。おれもな、高山にながいこといるんでな。まあ、たいていの者の顔はわかるが、 ―― おれのことを知ってるか?」
自分のほうへむかせると、一人の方がひきつった声をだして関所とは逆のほうへ走りだした。それへコウドが拾った石をあてて転ばせる。
肩をつかまれた男はタクアンの顔をみながら必死な声で、「ここに、その、高山の坊主だという、身元札が、」と取り出した木札を、タクアンはみることもなく片手で折った。
「あのなあ、こういうことされると、本物の坊主が迷惑だろう?」
そのまま頭突きをくらわせると、気を失ったにせ坊主を兵士にひきわたした。
「そちらは、ほんとうに高山の坊様か?」
兵士はまだうたがう顔でタクアンをみて、その連れたちをみまわした。




