アラシの怪我は
7.
アラシは南の兵たちと酒盛りをしてえらく機嫌がよかったが、つぎにいくのが東だときいて、きゅうにやる気をなくしたようだった。
なんだよどうした、とセイテツにきかれて、東は水気がおおいからからだに障るのお、とはねをのばしてみせた。
「 ―― おまえらにはじめて会うたのも、あのあたりの沼であったろ?」
「ああ、そういえば」
動けなくなっているアラシを帝の命でさがしだして、助けたのだ。
「あの領地には、他にはいない美味い牛がいてな。それを三日続けて喰いにいったら、槍をなげられた」
「それがあのときの怪我ってことか?」
どのくいらい喰ったのかとスザクがきくと、十よりうえは数えん、とトカゲのような顔を得意げにうわむけた。
そりゃ槍も投げられるよ、とセイテツがあきれたようにわらい、アラシは機嫌をそこねたが、シュンカになだめられて、どうにか東の関所近くまでという条件で、背にのせておくってもらった。
東の関所にはたくさんの兵が詰め、馬車が荷をあらためられたり、人が持つ荷や身元をあらためたりで、こみあっていた。
かなり手前でアラシに落とされたセイテツたちも、おとなしく順番を待っていると、なにやら言い合う声がきこえてきた。




