雲湧き声のする地図
「島によっては海の神様をまつるところもありますが、ほとんどは地の神様で、土地の守り神をむかしからまつっているので。 海はわたしらに食べられる魚や貝などをわけて助けてくれる『神様のくに』だ。 なのに、 ―― 」
言って、ひろげられた地図を指先でたたくと、墨で画かれているそこに、黒い雲のようなものが、ぶありと画き足された。
「 ―― いま、このあたりまで黒い雲がせまっています。これが、《常世のくに》に押されている場所だというのは、コウセンさまからきいております。この雲のせいで、海の中もゆらいで、おかしなことになっているようで・・・」
紙に画かれているのにその雲が動いているのにシュンカは気づき、セイテツをみたが、首をかしげられる。
「どういう『術』なのか、おれには、まったくわからん」
セイテツが動く黒い雲に指先をのばそうとしたとき、『 おい ルイシク 』と地図の中から声がした。さすがのスザクも目をまるくして、その紙をのぞきこむ。
「ああ、ワニか。どうした?」
『 トブキ島に行ってつぎの妖物を退治してくる。石塔が倒されたらしい 』
「そうか。たのむよ」
将軍はいいながら、たてた指を地図にある『トブキ島』というところにあて、「 」小さく何かをつぶやいた。
「まてよ、まてよ」
タクアンがさわいで、セイテツが「まさか・・・」と将軍の顔をみた。
「まさか、いまので『結界』を張ったのか?」
細い声で、ええ、とみとめた将軍が「地神様の力をお借りしてるもので」とあたりまえのように言う。




