どうにかごまかし
そういやたしか、南はもう何代も同じ家系の将軍だよな、とスザクがいうのに、そりゃめずらしい、とコウドが腕をくむ。
「あとをめぐっての戦も内輪もめもないってことですかい?」
小声でスザクにきくと、もめはしますが、と近くのニグイがわらった。
「これ、ニグイ、そんなはなしはいい。お客様たちを立たせたままで失礼だぞ。はやくあちらのテーブルへご案内すればいいだろうに」
「こりゃ失礼いたしました。では、あちらのテーブルへみなさまどうぞ。ルイシクさまは歩くのも遅いので、ゆっくりお待ちください。わたしはお茶の催促をしてきます。 ―― お茶菓子はどうするかね?いつものでいいのか?」
いきなりくだけた口調で将軍をふりかえるニグイに、ルイシクが「果物がいいんじゃないかね」とかえす。わかった、と元きたほうへ消える背を見送っていると、ようやく近づいてきた将軍が、ニグイはわたしの甥でしてね、と照れたように口にした。
「あんなふうに見た目もいい男で、からだもしっかりしてる。ほんとうはあいつが将軍になればよかったのに、まだ年が若いからなんて自分でいって、こちらにそれを押し付けたんですよ」
いやなやつでしょう?と嬉しそうにわらうルイシクは、近くでみてもとても細くて、動きもゆっくりで、声にも張りがなかった。
「どこも悪くはないのですが、子どものころからあまり骨も肉も育ちませんでね。すこし疲れやすいぐらいなので、ふつうに将軍の務めはしておりますが、民の前にでるときには、からだが大きく見えるように派手な色の布で大きく仕立てた着物を重ねて羽織って、絢爛豪華な玉座にすわり、それを兵にかついでもらうんですよ。けっしてそこから降りず、言葉はわたしがニグイに耳打ちして、代わりに伝えてもらって・・・」それでどうにかみかけをごまかしております、とテーブルにたどりついた将軍は、ため息をおとすように腰も椅子へとおとす。




