ゆっくりおりる
「・・・もしかして、臥せってるのか?」
タクアンがニグイにきくと、むこうからわらいごえがあがる。
「よく、間違えられますが、これでも元気なので。さあ、どうぞこちらへ」
どうやらこの建物がえらく奥まで長いようだとみんながきづいたのはそのときだった。
ニグイのあとにつき足をすすめると、灯された明かりがふえてゆき、建物の天井近くにある窓があけられていて外の光もうすくはいり、あたりの様子もみえるようになった。
ぎっしりと天井ちかくまでの棚がならび、そこに隙間なくくみあわされたように、巻物と箱がつみあがっているのがみえる。巻物は布ではなく、紙のようだ。
セイテツがうなるような声をもらし、タクアンもこりゃすげえ、と感嘆した。シュンカとコウドはやはりくちをあけたまま、それをみあげる。
「暗くて申し訳ございませんが、紙は傷むし燃えるのでね。いまそちらへおりるから待ってくださいね」
いいながら、壁にかけられたながい梯子を、質素な着物をきた痩せすぎの男がゆっくりとおりてくる。
心配になったシュンカがそこへよろうとすると、へいきですよ、とニグイに腕でとめられた。
「足腰もいたって丈夫ですし、ルイシク将軍は、まだ四十すぎのお歳です」
「えっ!?」
おもわずセイテツが声をもらし、あわてて口をおさえる。
なにしろ、梯子をゆっくりとおりきったその姿はいやに細くて、おりるときのうごきも頼りなくみえたから、もっとずっと上かと思ったのだ。




