閉め切った離れ
「うお~」
コウドとシュンカがそろってくちをあけ、その屋敷の中をみまわした。
南の領土の建物は、床を高くつくり、そのうえに平たく広い家をつくるのだが、将軍の屋敷の広さはすごかった。しかも、「客人を迎えるための大広間だけは、三階までつくってあるのです」とニグイが説明しながらひきいれてくれた。
馬車とおなじように壁には鮮やかな魚や貝がえがかれ、階段や回廊の手すりは黒い木材だが、花や鳥の彫刻がほどこされ、あちこちにそれらとみあうような、花瓶や彫像、それに美しい染め色の布が垂れ下がっている。
ときどきすれちがう男たちは腰にみじかい刀をさし、たちどまって礼をするので、ようやく兵であろうとわかるが、ニグイとおなじように防具のようなものは一切身に着けていない。
「城のなかでは、兵も鎧をつけるなともうしつけられております」
コウドがきく前に、白い歯をみせてわらう男に、そんな平穏かい?とタクアンが片眉をあげた。
「ああ、もちろん妖物はでますし、海が、・・・・それは、ルイシクさまからおききください」
大広間を奥にすすみ長い廊下を渡った先に、離れというようなこじんまりした建物があった。他のたてものは外がわの縁に面した扉がすべてひらかれているのに、その建物はすべての扉がしめきってある。
「閉めてあるのはいつものことですので、気にされることはありません」
いいながら扉がひらかれた。
中は薄暗く、なんだかひやりとしている。
足をふみいれた床が磨かれた石のようで、ところどころでともされたあかりを映しているのに気づくと、壁までも同じ石なのだと気づく。
将軍、みなさまおつきです、とニグイがさけぶ。
「 ―― ああ、これは、よくおこしくださいました・・・」
奥の暗いほうから、高くかぼそい声がみんなをむかえた。




