歓迎
6.
南の領土に入るため、またしてもアラシにのせてもらい南の関所近くを目指すと、道のそばの野原には大勢の兵たちがならび、上をみあげて手をふってきた。
「なんだ、ありゃあ」
タクアンがその歓迎ぶりに眉をひそめた。
アラシがおりたてば、それを見守っていた兵たちが声をあげて讃え、その中から一番色の黒く歯がやたら白い男がすすみでると、お待ちしておりました、と明るい声でむかえ、みなさまあちらの馬車へどうぞ、とむこうにある四頭の馬がつながれた、造りも豪勢な車をさした。
アラシの周りにあつまった兵は、わが南の誇る牛などツマミにいかがでございましょう、などと、そばにつみあげた酒樽をあけはじめている。
「僕のアラシを歓迎するのはわかるが、ここでおれたちがこんな歓迎されるおぼえはないんだけど・・・」
思い返せば、妖物退治も、南の領土の内へは、帝にいかされた覚えがない。
セイテツがその大きな馬車へかけられたはしごをのぼりながら、白い歯の男をふりかえる。
いやいや、と首をふる男は、これからのためにでございます、とわらった。
「なにしろみなさまのことはいままでも噂ではきいておりますが、こうしてお会いするのは初めてでございますし、今後のためにも、この南のことをよいところだとおぼえてお帰り願いたいもので」
みなさま、どうぞ乗ってくださいとあおぐように手を動かした。




