おそれいる
「どうりで、らしくもないこと言うわけだ」
セイテツがわらいながら、ゆるしてやってくれ、というのに重ねるように、ボッコウが腹の底からの笑い声をあげ、そうか納得しおったか、とコウドをみおろした。
「わかればよい。たしかにトクジ殿もたいした御仁だが、サモンさまは格がちがうのだ」
どうだ、というように腕をくむボッコウに、こんどはなにも返せないコウドはただうなずいた。
格がちがうといわれた男のほうが顔をあからめ、ボッコウもういいだろう、とコウドの前に片膝をついてむかいあうと、トクジどのはお元気か?と笑みをうかべてきいた。
おそれいるというよりも、サモンのその思ってもみないやわらかい雰囲気にとまどったように、コウドはただうなずくだけだった。
けっきょく西の領土内では、妖物がでることもほとんどないことがわかり、コウドが言った通り『平穏』であることがしれた。
「ケイテキがおさめていたのだから当然かもしれねえな」スザクが鼻をかきながら、そのケイテキが使っていたという屋敷の中をみわたした。
豪勢な調度品でかざられた二階建ての建物で、赤ん坊の泣き声がいくつもきこえてくる。シュンカはさきほど、病人やけが人のいる療養所をボッコウとまわりに行った。




