さすがサモン
ケイテキのために建てたという療養所は、内乱でけがをした者たちの療養所としてつかわれ、そのちかくにある将軍の邸宅は、たくさんの年寄りと子どもたちであふれかえっていた。
先をあるくボッコウはもちろん、スザクが坊主であるのに気づいた何人かの年寄りが、あらたまって頭をさげ、こどもたちがものめずらしげに目で追い、シュンカのまわりを小さなこどもたちがついてあるきだす。
サモンが腰をすえた大きな屋敷には、敷地内のいくつもの建物とつながる長い廊下があちこちにあり、その廊下を女たちがいそがしく行き来し、中庭からはサモンの兵たちに稽古をつけてもらう男たちがいた。
「この屋敷も病人のためにサモンさまが療養所とさだめた。それに、もうすぐこどもを産む女たちもいる」
「そりゃいい。さすがサモンだ」
セイテツがいうのに、ボッコウはうれしそうにうなずき、ちらりとコウドをみた。
「われらのサモンさまは弱きものたちにこころをよせておいでだ。ほんとうに強い者というのは、つねにそうあらねば」
これにコウドが鼻をならすようこたえた。
「まあ、そうでなけりゃただの力自慢だ。こっちには、壱の宮の大臣は、罪人を四、五十人まとめて牢にぶちこむなんて噂しかとどいてこねえ」
「っきさま、先ほどからサモンさまを愚弄しおってからに、」
「 ボッコウ 」
むこうのほうから名をよばれた大きな男が、あげた腕もとたんにおろし、身をすくませるようにしてふりむくのをみんなが目にする。




