コウドらしくもなく
すると、からだに子どもをひときわぶらさげた大きな男が笑顔をむけた。
「おお、これはスザク殿ご一行さまだ、だれかわしと代われ」
子ども三人をまとめて抱き上げ、さらに腰まわりについているこどもを代わりの兵に放り投げるようにわたしたのは、一の宮のサモンが人間であったころからの側近である、ボッコウだった。
「ずいぶん人気だなあ」セイテツがわらうのに、いやはや、と汗をぬぐい着物をととのえた男は、お待ちしておりました、とこちらに寄った。
「なんだか、平穏ですね」
コウドがセイテツの後ろでつぶやくと、ボッコウがとたんに何かをみつけたように顔を険しくし、「おまえ ―― 軍人か」と、にらみすえた。
「あー、ボッコウどの、たしかにこいつは元西の軍人だけど、もうずっとトクさんのところにいて、シュンカの護衛というか・・・」
セイテツがどう紹介しようか迷うと、コウドがまえにすすみでて、ボッコウの正面で背をただし、色街の男衆でコウドと申します、と名乗った。
「 ―― 西の軍人だったのをかくすつもりもねえし、みんなも知ってる」
するとボッコウはにらんだままでいいはなった。
「それなら、おまえが先を歩け。盾になっていつ死んでもいいようにな」
「たしかにいつ死んでもかまわないが、おれが盾にならなきゃいけないほど、みなさん弱くないんで、いらぬお節介ですよ」
「なに?」
「それとも、あんたがお仕えするお人は、あんたらが盾にならなきゃいけねえような弱虫かい?」
「っこの!」
ボッコウの太い腕がのばされそうなのを、シュンカが止めるより先にセイテツが二人の間にとばした氷をはじけさせてとめた。
「おい、サモンのとこにはやく行こうぜ」
スザクがつまらなさそうにせかすのに、ボッコウはコウドをにらんでからうなずいた。




