アラシも加わり
「まあ、けっきょくは帝の『追う者』が下界にいるからってことで気になったんだろうがな。だがそれも、むこうが正体をここまであらわして、ことを起こそうとしているいま、みる必要がなくなったということだろう。 なにしろ天帝は、この世がどう転ぼうとおのれの身にはなにもおこらないからな。おれたちの占いで相が出なくとも困ることもない」
「帝が邪魔してるのか」
つまらなさそうにスザクが鼻をならすのに、コウセンは口と首をまげた。
「帝が、というより、《常世のくに》と《この世》との境にできた歪んだ『気』のせいだろう。それが歪んできしんで大きくなってるせいで、地場にも空にも、占型にもゆがみがでる」
「そのゆがみってやつで、『化かし辻』も歪んでいるってことか?」
それでケイテキの中身は逃げ込めたのか、とセイテツがきく。
『化かし辻』はいまトクジの札でおさめ、人はとおらぬようにしているときいた。
スザクが首をまげた。
「いや。あそこはもとから妖物がとおれるようにしてあった場所だ。トクも言ってたがやつがにげこんだあとも、歪んでるって感じはしねえ」
「『歪んでる』といえば、空もかなりゆがみが激しくなってきておるようでな。僕どももこんどのことではえらく腹をたてていて、アラシはおまえらに加勢するってよ」
「アラシがか?『加勢』ってどんなふうにだよ」
スザクはうたがうように目をほそめた。
トカゲのようなからだに翼を持つ風と雲の僕のアラシは、本来は大臣たちとおなじように、下界の者とかかわりはしない。
スザクとセイテツには一度助けられたことがるので、ときおりその背にのせて空をとんでくれるが、いつもむこうの気分しだいだった。
「呼べば来ると言っていたし、おまえらが行きたいといういところまで、のせて連れて行ってくれるようだぞ」
ほんとかよ?とまだ疑うスザクのよこで、セイテツは、やった、と手をたたく。




