ふえた人手
「人手がふえて、楽ってだけだろ」
スザクがいいきるのに、先ほどまで顔をしかめていたタクアンが、楽ではねえだろう、とむこうを振り返って言った。
「 ―― おまえらで、これまでどれほど退治したかは知らねえが、なんだかこりゃ、数が多くないか?」
たしかにここにくるまでのあいだに、山の中や川の中から次々と妖物がとびだし、セイテツは文句を言いっぱなしだったし、シュンカは清めの塩が足りるか心配そうだった。
たったいま片付けた三匹が、荒れた畑の中、きれいに清められてあとかたもなく消えるのをみとどけた絵師は、そうなんだよ、多いんだ、とうなずき、だが弱い、とつけたした。
「 ―― おれとスザクだけでやってたころは、もっとでかいやつで、しつこかった」
「てめえがはじめから本気でやらなかったからだ」
坊主は鼻をならす。
「まあ、それもあるのは認める。退治してても、帝にこきつかわれてるなあ、って感じだったけど、いまは、その妖物がどうして出てくるのか理解したし、戦う相手が、はっきりしたから、気の持ちようがちがう、かな。 ―― 時間がないのも、わかってる」
みまわしたどこもかしこも、放置されてかなりたつ田畑で、傷んだ家がならぶ。
コウドが怒りをおさえるように、ここも襲われてかなりたっているな、と口にした。
「だが、妖物が来る前に、どうやら逃げられたようだ」
タクアンが右目の上をかきながらあたりをみまわす。
「どこにも骸はみあたらなかったし、こういう小さな里の人たちは、シャムショが一か所にあつめることにしたんで、おれたち坊主が声をかけまわっているはずだ。たまには生きてる人間の役にもたたねえとな」
このタクアンは、高山の坊主で、本来ならば、『帝』の命によって妖物退治をするスザクたちとは、いっしょに妖物退治はしない。
だが、いまはそんなこともいっていられない時になっていた。
―――――――――