策は無く
「それに、知ったところで、おれたちはやはり、なにもできなかったしな」
こんどの騒ぎで大臣たちが下界に出張るゆるしを帝がだしたのは、あくまでも人間をおさめるためだ。
「大臣たちが《中身》をつかまえるのが手伝えないのはわかってるさ。でも高山のぼうさんたちも山をおりてきて妖物退治に手をかしてくれることになったんだ。助かるよ」
セイテツは本心から息をつく。
この先、《常世のくに》とのゆがみのせいで、妖物はあちらこちらから出てくるだろうと予想される。じぶんたちはそれらを気にせず、ケイテキの中身だけを追えばいいとなれば、かなり集中できるはずだ。
おまえらは、ザコは相手にしねえってか、とわらったコウセンは杯をいちどおく。
「―― で、トクジ殿がくわだてたとおり、おまえらはシュンカをえさに、むこうをおびきよせるのが、いちばん早いというわけか?」
まだすこし納得いかない男は腕をくんでスザクをにらんだ。
「それ以外になにかいい策でも思いついたかよ」
「 ―― 思いつかんから腹が立つ」
のみほした器を坊主になげつけたが、しっかりつかみとられテーブルに置かれた。
「思いつかねえでも、大臣たちの占型になにか出ねえのか」
スザクがコウセンをにらんだ。
「だいたい、この前からの顔を剥ぐ騒ぎにしたって、あれも何もでてなかったのかよ」
「・・・でてねえ、というか、・・・なにもみられない。じつはな、あの、三月先をよむための卦相だって、もとは帝にいわれてやりはじめたことだ」
「ほんとか?そりゃ、下界を気にしてってことで?」
セイテツが意外な思いでききかえす。




