ジュフクからの頼み
「おお、よお気がついたのお」
出来の悪いこどもの正答をほめるように、ジュフクは嬉しそうにうなずいた。
「だからな、この高山のジュフクが、おまえたちにあらためてそれの退治を頼みたい。退治できねばこの世のすべてはなくなろう。スザク、セイテツ、これはミカドの《くちだし》ではないが、ことわれぬぞ」
ここまできて、ようやくセイテツはあのときのホウロクの気持ちがすこしわかった。
勝手にやってきた人間に、住む場所をあらされてうばわれ、多くの仲間をあっというまになくし、身を守るために『オオシマ』のよどみへと姿をかくしていた黒鹿たち。
藁色の頭をガシガシとかく絵師に気づいた坊主が鼻をならす。
「おいテツ、いろいろ考えるのは、ケイテキの中身を退治してから考えろ」
「わかったよ。 ―― そうだな。とにかくさきに、それをやらねえと」
ぱん、と手をうちあわせると、こまかい氷の粒が舞う。
そうだな、とドウアンもうなずいた。
「タクアンは、おまえらといっしょに《ケイテキの中身》をおいかけたいと言っている」
コウアンが腕をくみ、ジュフクにうなずいてから口をあけた。
「よいかスザク、こたびは、この高山のわしらも妖物退治に皆でばることを、帝がゆるされた」
「ほんとかよ?坊主が妖物退治するのも殺生になるとかいう、じいさんのいつもの《お得意のはなし》はどうした?それでタクアンしか出さねえじゃねえか」




