追われるもの 追うもの
「その執着のおかげか、帝がキフクを『おもて』にだすようになった」
「おもて?」
「わしらの縁は取り上げてはおらぬゆえ、帝もそれになにかを感じ取ったのかもしれぬなあ。いや、・・・キフクが帝に訴え続けたのかもしれぬがな」
年寄りの息をはくようなわらいで、口の周りの白い髭がゆれる。
「《ウツワ》であるキフクを、おもてにだして、わしとじかにはなすことを、ゆるされた。 そこまでで、帝とは《ケイテキの中身》のこともはなしてはおったがな、なにしろ、《ウツワ》が西の将軍ゆえ、なにもてだしはできぬ」
「ケイテキの中身っていうのは、いったい何なんだよ」
セイテツがきくまえに、スザクがきいた。
年寄りは、わしもしらぬ、とそっけなくこたえる。
「 ただ、《常世のくに》の者は、そこをでてはならぬという決まりがあるようだ。出たところには穴があき、そこからまた、ほかの者がでてゆく道ができるらしい」
ケイテキは、《常世のくに》をでて、その道をつくった。
そうしてそこから妖物となる者たちも出てゆき、《帝の中身》も、それをたどった。
「《帝の中身》は、まずこの世を先におさめる位置につき、《逃げたもの》をさがすことにしたらしい。この世にはさきに人間がおり、それに紛れていれば容易にはみつからぬとさとり、腰をすえることにした、というたわ」
《この世》の他の生き物を《ウツワ》とすることのできた《常世のくに》の『追われる者』は、中にはいりこみほかの人間を『わたる』術もおぼえた。
すると『追う者』がにらんだとおり、ヤツのほうからこちらの近くに寄ってきた。
西の将軍という位置で。




