のぼりにゆく
色街でチサイの《中身》がケイテキであると知れて騒ぎが起こったときに、天帝とジュフクが会ってはなしていたのは、きっとケイテキに関することだろうとは思うが、高山に帰ってからも、じぶんたち側用人にも、なにも語らないと、従妹であるドウアンから聞いている。
「ドウアンは、ジュフク殿にそれなりの考えがあってなにも話さないんだろうというんだが、それじゃあこまる。おいスザク、おまえならなにか聞き出せるんじゃないか?」
なんだかんだと、この男は高山でも一目置かれる存在だ。
「ああ?あのじいさんが、おれにもわかるぐらいの細かいはなしをするとおもうのか?」
「・・・・だよなあ・・・」
あの老人からなにか返ったとしても、きっと、問答のようなわかりにくいこたえだろう。
「まあ・・・、期待はしないが、なにもないよりはいいか」
「高山に、おめえものぼるのか?」
スザクがめずらしく驚いた顔をしてから、にっとわらう。
「おいテツ、いっとくが、アラシはつかえねえぜ」
空をとぶ、羽のあるシモベとよばれるあの生き物は、ときどきは背にのせてくれるが、高山にはちかよらない。
「おれだって、このごろトクさんにきたえられてるんだよ」
すこし余裕があるように言い返した絵師は、このときまだ、その道の険しさをしらなかった。




