『 おとぎばなし 』
つぎで、おわります。
わるいが、おれたちは忙しいんでな、とコウセンがわらいながら片手をふった。
「『元にもどった』わけじゃねえよ。これから、城だけじゃなく、北の領土の全般的な立て直しもしないとならんし、ほかも妖物にやられた場所や人のところに、おれたちがでむいていって、手伝って、なおしていかねえとならんだろ」
「え?大臣たちが?だって、ミカドが・・・」
いや、そもそも、《常世のくに》からわざわざおいかけてきたというのに、その相手と手を組むよりも、《この世》を残すことを選んだ帝は、これからどうするのだ?
腕を組んで首をまわした四の宮の大臣は、ミカドは天宮で、ジュフクどのとこの先のことを相談している、と言った。
「 ―― ってことは、《この世》はまだ、あの白猫があやつってくのか?」
セイテツのこえにはなんだか嬉しさがまざってしまう。
「だがよ、相手はアレだぜ。いつ厭きていなくなるかもわからねえし、へたしたら、《常世のくに》からまだなにかくるかもしれねえしな」
スザクが星の瞬く空をみあげ、セリがもう穴はねえっていったが、どうだかなあ、とつぶやいた。
くつくつとコウセンがわらいだし、そうだな、とスザクとセイテツの顔をにやけて順番にみて、アラシの上から身をのりだすと、両手をつきだして、二人の頭をなでた。
なんだよ気味わりィな、とスザクがにらむ。
「 いや。なんだかおれがむかし、息子に毎晩きかせてやっていた『おとぎばなし』を思い出してな。 あれは、何かがいきなり《はじまる》と、いきなり《終わる》だろう?おれの息子はそんなはずないといって、それにつながる『おとぎばなし』をいくつもじぶんでつくって、おれにきかせてくれてな。―― はじまったはなしは、ひろがって、きりがなくて、いつまでも、おわらなくなる」
「 ―― へえ。そりゃあなんだか・・・」
セイテツは思わずとなりのスザクの顔をみた。
スザクもセイテツをみてこたえた。
「 なんだかそりゃ、おれたちのいる《この世》のことみてえじゃねえか」
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