セイテツの反省
その、黒鹿のところからもどる道すがら、セイテツはだんまりで、ずっと眉間にしわをよせていた。
いいかげんそれにあきたスザクが、「てめえが考え込んでもしかたねえだろ」と言ってみたが、セイテツはうなったままだった。
「うーん、だってなあ・・・」
セイテツは、ホウロクに当てられたとおり、どこかで黒鹿はただの鹿と同じように、人に狩られるものだという考えがあった。
そこには、この世界の成り立ちだの仕組みなどということは、まったくはいらずに、人間がこの世の真ん中にいるという考えしかなかった。
「・・・はずかしい・・・。この歳になって、はじめて、ドウアンの言ってることの意味がすこしわかった」
従妹であり、高山の坊主である男を思い出し、いままで軽く聞き流してきた説教をおもいだす。
「この世のなりたちだとか、仕組みだとか、ただの坊主がつくった昔話だと思ってたが、そういえば、サモンのことも、高山で正しく語られているものがあったし・・・」
「だからなんだ?」
「え?いや、だから・・・・」
「てめえがいまさらそんなもん考えてもしかたねえって言ってんだ。おれたちは、ケイテキがゆきそうな場所に行って、やつが隠れていねえか確かめる」
いまやることはそれだけだ、と言いきるスザクをみて、セイテツは、藁色の頭をかき、まあそうか、と納得した。
「 ―― とりあえずは、ケイテキをみつけるためにも、その、《ケイテキの中身》か?そいつのことをよく知る天帝からくわしくききたいが、・・・」
「アレが、おれたちにそんなこと話すかよ?」
「だよなあ・・・、そうすると、たよりは、ジュフクどのか」
「あれもあれで、話すかどうかは、わからねえがな」
「だよなあ・・・」




