おまえのせい
残虐な表現あり。ご注意を
「 ―― なんだ?」
セイテツが目をみはると、コウセンが、「サモンはやはり、やさしい男よ」と顎をかきながらわらう。
かたほうのケイテキが突然顔を赤く染め、もうひとりのケイテキへととびかかった。
「 おのれ、 おのれ、 おのれエ!! おもいだした!おもいだしたぞ! 」
さけびながら押し倒した相手の顔をのぞきこみながら拳をふりあげた。
「 くっそ、 どうして、こんなことをおれは忘れていた?こんなだいじなっ、 おれの父も母も、戦に巻き込まれたんじゃない!おまえだ!おまえに襲われたんだ!隣の豪族の襲撃にみせかけて、おれの目の前で、母は首をとばされ、父はこまぎれにっ っくっそ! かえせっ! おれの母を!父を! いままでのおれの生き方を! あんなふうに生きるべきじゃなかった! ちがうちがう!おれは、おれも父のように! 天をさして教えてくれたのはだれでもないおれの父だ! この世の真を見失うなと、いつも言っていた父だ! ―― なのに、くっ、・・・ホムラに、父のおしえをホムラに伝えたとき、おれはすでに闇をみあやまっていたのか・・・。おまえのせいだ。おまえになどあわなければ・・・ っご 」
砂にたおされたケイテキが持つ刀が、上にのるケイテキのからだをつらぬいた。
おもわず両手をあわせ氷をとばそうとしたセイテツの腕をスザクがつかみ、みていろ、ととめる。
「 《 ようやくおもてにでてこられたくせに、くちにするのがそんなことか。いまさら善人ぶってみたところで、おまえがおれとともにしてきたことは、おまえもどこかで望んでおったことよ。人間は人間同士で力をくらべ相手を負かし、ときに殺すことをよしとするではないか。さらには、人間いがいのものを狩って喰うのは、オレたちがおまえらを喰うのとどうちがう?同じことをしているのに、なにがよくてなにがわるい? この世 だから、人間の道理に従えというのなら、ここを 常世 にかえてやろう。 おまえの父親の道理など、 この世 でもいく百幾万の人間がそれぞれもつつまらぬ道理のなかの、ひとつにすぎぬわ 》 」
にぎっている刀の柄をまわして、上にのるケイテキの腹に刺さる刃のむきをかえると、ぐっと胸の方へひきあげた。
《元のケイテキ》がまた、っご、とむせるようなこえをあげて肩をまるめ、両手を砂地につける。




