あれをやりにきた
はしったケイテキがくりだした刀と受けるサモンの太刀すじも、セイテツには見えないはやさになった。高くて硬い刃のくいあう音だけが寄りあったふたりの間にひびき、セイテツはスザクをふりかえる。
「おいまさか、あれで結着がつくのか?」
「つくだろ。なにしろケイテキの中身はもうコウセンの砂で縛られたしな」あの砂山からでてきたところから、もう、《術》にはまってんだ、とスザクが腕をくむのに、四の宮の大臣は、だがなあ、とゆるくわらいかえした。
「 ―― おれができるのはここから『逃がさない』ってとこまでだからな。あとは、お前らに任そうかとおもってたんだが、サモンがくるとはなあ」
「おれたちじゃあ無理だ。 ―― みろよ。サモンはあれをやりに来たんだろ」
砂に突き刺さったままだったサモンの太い刀がうごき、倒れた。
気づいたサモンがその刀を拾いにはしる。
先にとびついたケイテキの手がその刀の刃をつかんだが、サモンは柄をつかみあげて刃をぐるりとまわした。刃をつかんでいた手をえぐられたケイテキが、うなって手をはなした。
サモンはそのまま刀の刃先をひきずりながらケイテキのまわりをはしり、ケイテキをかこむような線を砂地にひいた。
すぐにきづいたケイテキがふりあげた刀をかるくはねのけたサモンは、あがったままの刃を、そのままケイテキへとふりおろした。
だが、その極太の刃はケイテキにはあたらずに、足元にはげしくたたきこまれただけだ。
足元の砂が、まるで水のようにたかく噴き出したとおもったら、
―― ケイテキが二人になっていた。




