胸と腹と
残虐描写あり。ご注意を
「 《 キシンとは、オニとはまたちがう生き物か。ふん、中に入るのは無理そうだが、喰うことはできるな 》 」
ケイテキが割れた顔でわらい、両手で刀をかまえた。
ぶ ぅ ォっ
風をきる音がしたときには、サモンのまわした太い刃が、ケイテキの胸と腹を上下に断っていた。
だが、一度はなれたその胸と腹は、ずれたままでまた重なる。
口から血ではない黒いものを大量に吐いたケイテキが、恐れと傷みを混ぜた思ってもいない叫び声をあげ、セイテツは、びくり、と身をかためて西の将軍だった男の顔をみる。
「 っそ んな ばかな 大臣は 人間に手をださぬはずだ 」
歯を黒く染め、唾をたらしたケイテキが、信じられない者を見る目でサモンをみあげている。
あれは、元のケイテキだろうと思ったセイテツは、すこし心が痛かった。
サモンが、ぞくりとするような笑みをうかべる。
「そうだな。あいてが人間ならださぬが、おまえはもう、人ではないだろう? よくみろ。おれが斬った胸と腹がまた戻りだしているだろう?それに、ハラワタはどうした?血はどこだ?」




