いつから《ウツワ》に
「《土釜の禁術》を教えたのは、《常世のくに》からきたヤツか」
「ああ、アイツがおもてにでたときに、禁術の書物をどこからか持ってきて、ホムラに渡すようおれにいいつけた。 たしかに、おれもはじめは、おもしろいと思っていたが ―― 《土釜》をやりだしたホムラは、アイツとひどく通じ合っていくのを感じた。おれではない『アイツ』とだ。 おれもたしかに、『人でなし』とののしられたことはいくらでもある。ホムラのやりかたにも異をとなえるつもりもなかったが、・・・おれはしょせん人間だ。いくらもがこうと、この世のなかで西の領土の頂点であるというだけだ。そこがおれの領分だ。 だが、《土釜》をやりだしたころから、ホムラはおれの領分からずれはじめ、気づけばおれの中のアイツの『力』も強まって、おれがアイツをおしのけることができなくなった」
「すると、《土釜》のできあがったころは、完全にのっとられてたのか。 おまえはいつ《ウツワ》になったんだ?」
「・・・覚えておらん。気づけば、あいつはもう中にはいっていて、おれは親のいないこどもとして兵に志願していた。 そのまえの記憶はきっとヤツにとりあげられているのだろう。 ただ、・・・夜空をみあげ てっ ―― っが、 」




