砂に問う
《ケイテキ》の顔の口と目は、無限に砂を受け入れるようにみえたのに、しだいに目とくちに赤茶色の砂山ができ、うけいれなくなった。
すると、ぶつっ、となにかが切れるような音がして、あおむいた《ケイテキ》の首の後ろになる部分から、いま入ったはずの赤茶の砂がこぼれはじめた。
つづいておかしなぐあいにまがった肘、肩、と、いったところからもこぼれだす。
砂がこぼれるにしたがい、黒いケイテキの巨大な身体は、砂が『中身』であったかのように、小さくなりはじめた。
表面がいつのまにか肌のようにかたまっていた身体は、『中身』の砂がぬけるとたくさんのシワがより、あちこちやぶれはじめ砂をこぼしている。
ざん、と砂をいれた袋がおちるように、ケイテキの『頭』が地に落ちた。
続いて肘が音をたてて折れ曲がるのといっしょに、首も肩も砂の重さに耐えかねたように落ち、あおむいた《ケイテキ》の背がいちどに地面につき、脚の先についていた頭たちも落ちると、そこからも砂があふれだした。
巨大なケイテキのバケモノだったものは、いまや巨大な砂山へとかわり、あたりはすっかり赤茶色の砂地になっている。
「さあて、こんなもんで、 ―― どうだよ?」
コウセンがにやりとして砂山へかけた言葉は、《ケイテキ》というバケモノをすべて砂山にかえた余裕からだとセイテツは思いたかったのだが、まだコウセンはあしをひらいたままで、スザクまでが刀を構えなおしている。
砂山からはなんの『気』も感じ取れないし、なにも動かない。
しかたなくセイテツも気を抜かずに手を合わせなおしたとき、ケイテキの頭だった部分につもった砂が、風ではらったかのようにひとすじうごき、砂山がかたちをかえた。
スザクが前にでて、コウセンがいちだんと笑みをふかめ、「どうだよ」と、また口にする。




