ヒョウタンから砂
ふうん、と《ケイテキのバケモノ》をながめたコウセンが、意外そうな声をあげた。
「おかしな《術》の効き方をしてるな。あそこにふたつある頭もケイテキか・・・」
コウセンが腰のヒョウタンをとりあげ、栓を指先でとばす。
「あーそりゃあ、先に脚がでてきて、テングの助けもあって、スザクが《術》を喰わせたけど、たりないらしい」
「まあいい。とりあえずは、コイツがもう逃げないようにしないとならんが、おいセイテツ、スザク、おまえたち、ジュフク殿にちゃんと『穴』をふさいでもらっているだろうな?」
「してもらったよ。おれたちがつぎの『ウツワ』になんかされるわけにいかないからな」
そうか、とゆるくわらう男はヒョウタンをつかみ、逆さにした。
だがなにも出てこない。
眉をよせるセイテツに、安心しろというようにうなずくと、小さく何かつぶやいた。
ざざっ、という音がセイテツのそばをすぎていった。
ヒョウタンのくちからあふれでているものが、《ケイテキ》のくちと目の《黒い穴》をめがけて流れてゆく。赤茶色い帯のようみえるそれは、水のようにながれてゆく砂粒だ。
「東の砂は《常世のくに》から逃げてるっていってたけど・・・」
「いや、あのヒョウタンの砂は、コウセンが育った谷にある砂丘のものらしい」
スザクもその尽きない砂をセイテツの横にきてながめる。
コウセンは、《海のそとのくに》から来たというはなしを前にきいたことがあるセイテツは、だまってそれをながめながら、それぞれの大臣が帝によってどういう理由で選ばれたのかを考えようとして、やめた。




