ここがかなめ
いそいで目をつぶれば、なんのまえぶれもなかったのに竜巻のような突風がまきおこり、
ふせた顔に痛いほどの砂があたるとともに、手首がきゅうに軽くなった。
薄目をあけそっとうかがうとまとわりついていた黒い煙はあとかたもなく、自由になった両手に血が流れ始めしびれている。
「おせえじゃねえかよ」
むこうでスザクが顔をしかめて刀の先をむけているのは、四の宮の大臣、コウセンだった。
「 ―― あのな、おれは、シュンカたちと北の民の安全を確認してから、来てんだぜ? おまえらこそ、ずいぶん手間取ってるじゃねえか」
懐手にして顎をかき、むけられた刃に手をふった。いつもは後ろでゆわかれている髪が、めずらしく解かれ、ぼさぼさだった。
「コウセン、シュンカたちは?」
「シュンカが無事じゃねえのに、おれがそれを放ってお前らのところにくるとおもうか?」
「いや、思わないけど・・・」
セイテツのこたえにゆるくわらいうなずく男は、安心しろ、と着物の袖に腕をとおし、腰にぶらさげたヒョウタンをたたいた。
「ほかのところも、みな助けに出てうまくいってる。 まあ、要はここだから、ここがうまくいかねえと、どうにもならんがな」
かるくいいながら、あしをひらいた。
場の気配がかわり、セイテツは寒気を覚える。




