首
セイテツの悲鳴とも怒号ともつかないものがひびきわたり、坊主はいまだにヨクサの腹の中にもぐりこみ、喰い続ける《瘤》をつかむと、にやりとわらった。
「 ―― おい、テングの《術でできたからだ》を喰ったな?それならてめえは、もう《この世》の《術》も効く身体だ」
指で《文字》を綴ると、すばやく瘤のくちへとそれを押しこんで喰わせる。
あばれだした《瘤》はテングのからだからひきさがり、むこうに転がっている切り飛ばされたヨクサの首が、ごそり、と動いた。
ひえ、と口をおさえたセイテツにも、きられたテングの首に生える翼が動いているのがみえた。それがはためきだし不格好にとびたつと、ヨクサの首は血をしたたらせながらこちらへむかってきて、またあげそうになった声をあわてておさえる。
そういえば、テングたちは『からだ』がいらなくなったときに、首から上だけ切り離すのだという怖いはなしを、スザクからきかされていた。
「すきで手放した身体ではないぞ。なかなか気にいっておったのに」
口から血をながすヨクサの首がそばにおりたち、セイテツを下からにらみあげる。
むこうではスザクの《術》を喰わされた瘤がひきさがろうとしたが、とつぜん凍り付き動かなくなっている。
ようやくこっちの《術》がききはじめたか、とセイテツも出ようとするが、まて、とヨクサにとめられた。




