きしむ音
「・・・なんだあ?」
気が抜けたような声をもらしたセイテツは、テングたちがあわてて棍をかまえるのをみてわらってしまった。
なにしろ、ヨクサたちにひきぬかれて姿をあらわしたそれは、一本につながった《黒い脚》だ。
天に足先をむけたそれは大根のようにまっすぐで、途中に膝がふたつあり、いま抜けたばかりのもうひとつの足先が、地をはなれるのを拒むように足の指をひらいている。かかとが落ちると、おのれがいまでてきた山をくずしたように盛り上がった土を、しっかりとふみしめ、土埃があたりに舞う。
上から棍をまわしたヨクサがほかのテングたちに、はなれろ!とさけびながら下降するのがみえ、なにをそんなに慌てるのかとおもったとき、セイテツもようやくそれがわかった。
っき とも っぎ ともいえない、なにかがきしむようなぞっとする音がした。
脚は、二つある足先を別々の方へむけ、両の膝をまげた。
天をさしていた足先も、まだ残っていた城の壁をふみつけ、ふたつの足の裏が、地をふみしめた。
土ぼこりが舞う中にヨクサが急降下し、まっすぐにつながる脚と脚の真ん中へ、構えた棍を突き立てようとしたが、脚にふれたとたん、棍は光をはなち、縦に割れた。
すぐに棍を手放し、翼をばたつかせて上昇にきりかえたが、つぎの瞬間、その翼がちぎれてとぶ。
「ヨクサ!」
セイテツが巨大な氷塊を、ヨクサが棍を突き立てようとしたところへ落とし、先にはしったスザクがどうにか下に落ちたヨクサをつかんでひく。




