脚いっぽん
いままで餅のようにのびていたそれは、もはや『伸びる』ことを許されなくなったのか、スザクとセイテツの目の前にある土の中から、埋まっていた下の部分がいっきに引き抜かれてゆく。
それはいくつもの瘤がかさなった、土の中で育つ黒い野菜のようでもあったが、『瘤』にはしっかりとさっきの口がついていた。
野菜のようにたやすく引き抜かれる黒い瘤のつらなりが、かたちをかえはじめる。
「どうなるってんだ?オニにでもなるのか?」スザクが刀をかまえる。
みているあいだに、土から抜かれた黒いモノは、天に足先をむけた一本の《脚》になりはじめた。
「なんだよ。オニにしたって、でかいな」セイテツも両手に力をためはじめた。
あれが《脚》なら、この城の三つ分くらいだろ、とみていたら、《脚》に膝ができ、さらに引き抜かれて、股のつけねあたりまで出たとおもったら、かんじんの身体はでてこずに、しばらくして、また膝がでてきた。
「スザク!もう出つくすぞ!」
囲いの真ん中部分をいちばん上でひいていたヨクサがさけぶと、とつぜん《黒い脚》が細くなり、残りが一気に抜け出た。




